トレーダー脳の作り方「欲望と恐怖の仕分け」

トレーダーは、精神活動そのものが仕事ですので、脳の機能をトレーダー用に作り替える必要があります。

一般的に間違った解釈をされているのが、「メンタルを強くする」という漠然とした考えでトレードに取り組んでることです。

アスリートの中でも、サッカー選手とプロレスラーの鍛え方の違いがあるように、トレーダー脳の作り方というのもがあります。

トレーダーに必要なメンタルは、けして、気合とか我慢などの根性論ではありません。

先に答えを言っておきます。

「常にフラットで、感情の起伏のない、確率論を熟知した精神構造」の獲得が必要です。

勝っても負けても、何のブレもなく、確率に基づいた作業を淡々と繰り返せる能力です。

こうなる為のトレーニングをしていなければ、どんなにテクニカルの勉強をしても常勝することは出来ません。

今回の記事では、トレーダー脳を作り上げるために必要な知識と、トレーニング法(行動と心理の仕分け)を、解説したいと思います。

判断力を鈍らせる原因は「欲望と恐怖」

トレード中は見えなかったものが、終わってみれば、「なーんだ、いつものパターンだったじゃないか、なんで気づかなかったんだろう?」ということは、ありませんか?

これは明らかに、ポジションを持っている時と持っていない時で、判断力のレベルが変化していることを示しています。

つまり、
ポジションを持ってる最中は、判断力が落ちているということです。

脳に負荷がかかっているからこそ、本来の能力を発揮できなくなるので、何が負荷の原因になっているのかを探ることで、一般人脳とトレーダー脳の違いを知ることが出来ます。

すべての相場参加者の目的は、儲けること以外にありません。
すると、どんな感情が売り買いを決定させているのかと言えば、お金に対する欲望と、失う恐怖です。

トレード初心者のビギナーズラックは、まだ、相場の世界の暗示と誘惑にさらされていないことから得られるものでしょう。

少しでも慣れてきますと、ローソク足の動き一つにも、欲望と恐怖をはらませてしまいます。

それまで常勝していたトレーダーであっても、大幅な取引枚数のUPによって、寝た子(欲望と恐怖)を起こしてしまう場合があります。

相場の世界は暗示の罠だらけ

    人が欲望に忠実になる例
    大安売りセールや、限定販売セールに、大挙押し寄せる。

    人が恐怖に踊らされる例
    突発的な大事故などの被害から逃れるために、安全そうな方向に一斉に走る。

本能的に、より良いものを得るために競争し、危険からいち早く回避するために逃走する。
このような脊髄反射があるからこそ、人類は現代まで生き残ってこれたのですが、こと相場の世界では、その反射がありますと、むしろ不利になります。

例えば、

ローソク足が急に伸びると、つい飛び乗りエントリーをしてしまったり、切らなくていいのに切ってしまったり。

ロスカットすべきと分かっているのに、したくなくなったり、出来なくなったり、逆指値を外してしまったり。

    〇あなたが幼いころ、お母さんがあなたを叱るのに、「言うことをきかないなら、ママ出て行っちゃうからね!」と言って、背を向けて出て行こうとしたことはありませんか?
    この時のあなたは、純粋に、お母さんがいなくなってしまう悲しさから、泣きながら追いかけて、すがりませんでしたか?
    お母さんでなくても、好きな人に去ってゆかれた辛い経験がある場合、意識の上では忘れているかもしれませんが、この時の記憶が、相場の動きのせいで、無意識化で反芻されてしまうのです。

    〇飛んできた石やモノをよける危機回避の反射。
    相場に類似した動きがでると、ビクッとなって、ポジションを切ってしまうなどに繋がります。

    〇ロスカットが出来ないというのは、単にお金が無くなるのが嫌なだけではなく、自分の考え(エントリー)を否定されることと捉え、過去の数ある失敗経験と、それによって叱られた記憶が蘇るからです。
    親や先生やその他、今までの人生すべての怒られた記憶が、無意識化で反芻されるので、たまったものではありません。
    だから、そのような苦痛は避けたくなるのです。

適切なロスカット(損切り)の仕方を教えます

実は人間は、驚いたり、慌てたり、怒ったり、悲しんだり、過去の経験からの苦痛を避けようと感情的になる時、前頭葉による理知的な思考能力が、わずか30%ほどに低下することが、科学的に証明されています。

MEMO
ジャングルで猛獣に出くわした時、本当に猛獣か? 敵意があるのか? 空腹なのか? 等々、じっくり考えているヒマはありません。
本能が「逃げよ!」と肉体に命令を下します。
原始的な記憶から、脊髄反射を司る爬虫類脳が活発になり、思考より先に身体が動きます。
脳の優位部位がスイッチするので、思考力70%減になってしまうというわけです。

相場の世界では、このような暗示的な動きが目まぐるしく展開されおり、刻一刻と変わる状況に、瞬時に対応してゆかねばならない上、確率論に基づいたルールを繰り返すだけという、一般的な人間生活とは真逆の、極めて難しい対応を迫られるのがトレードという作業なのです。

    では、プロトレーダーは、飛んできた石をよけないのかといえば、違いますよね。

    なのになぜ、トレードではフラットな精神状態でいられるのでしょうか?

    それは、「実生活と相場の世界は別物」だということを、脳にしっかり教え込むこと(切り離すこと)に成功した人達なのです。

そして話は、相場の仕組みに移ります。

殺戮のバンドワゴンに釣られるな!

trivia
アメリカの経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインが、人々の消費行動効果のうち、流行に乗ること自体が持つ効果を「バンドワゴン効果」と命名しました。
相場の世界にもその効果は顕著に見られ、特に投資・投機という性質上、
効果に巻き込まれる=無為に資金を失う 
ということになります。

この世は、強者のルールで成り立っています。
ビックマネーを持っている者達です。

相場の世界では、バーゲンセールを仕掛けているのも、大事故をしかけているのも、強者達です。

大多数の一般トレーダーを、欲望と恐怖による画一的な動きに誘導している、という事実を知っておけねばなりません。

相場における「バンドワゴン効果」はホラーです

楽し気な音楽を響かせて、ゆるゆるとバンドワゴンが道を進んで来ます。
何か面白そうなことが起こりそうな雰囲気に、徐々に観衆が集まり、バンドワゴンに乗り込んだり囲んだり、酒を飲んだり、踊ったり騒いだり、気がついたらパレードのようになっていました。

しばらくすると、音楽がピタッと止み、ゆっくり進んでいたバンドワゴンが、急にスピードを上げ始めます。
囲む観衆を弾き飛ばし、ワゴンから振り落とされた者、なんとかしがみついている者。
その上、いきなりバックして、後ろについてきた人々を轢いてしまいます。
前進したり後退したり、荒れ狂うバンドワゴンに、大けがをする者、死んでしまう者も続出します。

阿鼻叫喚の観衆は、いったい何が起きているのか分からない状態です。
その様子を、少し離れた所で見ている少数の人々がいます。
しばらくすると、バンドワゴンは停車し、離れて見ていた彼らがスッとバンドワゴンに乗り込みます。

再びバンドワゴンは、何事もなかったかのように、音楽を鳴らし、ゆっくりと進み始めます。
この少し離れていたところで見ていた人々こそが、パレードを仕掛けた主催者であり、その様子を酒も飲まずに冷静に観察していた者達なのです。

しばらくして、この惨劇が起きた土地から離れると、また、楽しそうな演奏に釣られた観衆が集まってきます。
再び、大勢の観衆が集まった頃合いに、バンドワゴンを暴走させるのです。

この悲惨極まりない物語が、常に相場で起きている事実です。

相場が荒れ狂ったり、静かになったり、調子よく進んだり、刻一刻と変わる状況に、頭が追いつかないのが一般トレーダーです。

それを静観することが出来、適切な行動がとれるのが、数少ないプロトレーダー達です。

なので、欲望と恐怖を感じている、もとい、トレードに刺激を感じているうちは、振り回されっぱなしのままです。

トレードを正しく執行するためには、常に相場の動きを客観視することです。

トレーダー行動の仕分け

トレーダー脳を作るための第一段階として、トレーディング中の様々な問題行動に、「欲望と恐怖」のどちらが根本原因となっているのかを仕分けてみましょう。

自分自身がいったいどの状況下にいるのか? を客観的に意識することで、改善策を立てることが出来ますので、チェックしてみてください。

  • 勉強せずにリアルトレードをする = 欲望
  • ルールを決めずにトレードをする = 欲望
  • 準備を整えずにトレードを始める = 欲望
  • ルール無視でトレードする(ポジポジ病等)= 欲望
  • 十分な時間がないのにトレードを始める = 欲望
  • 前の損失を取り戻そうとして枚数を上げる = 欲望
  • 飛び付きエントリー = 欲望
  • 当初の目標に達しても利食いしない = 欲望
  • 基準を割っても損切りができない(しない) = 欲望 & 恐怖
  • 逆指値やOCOを外す = 欲望 & 恐怖
  • 逆行中、エントリーした時の基準より大きな時間足の基準に切り替えて損切り幅を広げる = 欲望 & 恐怖
  • 基準以前で決済(利食い&損切り) = 恐怖
  • エントリーを躊躇してしてチャンスを逃す = 恐怖
  • 含み損が大きくなりすぎたとき、別の事を始めて現実逃避する = 恐怖
  • ポジション保有中に新ルールを作る = 恐怖
  • トレーダー心理の仕分け

    上記の問題行動の仕分けは、認識できましたでしょうか?
    次は、自分自身が、トレード中どんな場面で心が乱れるかを書き出してみましょう。

      エントリーする時
      ポジションが逆行した時
      ポジションが目標手前で反転した時
      思う以上に利益が伸びた時
      相場が急に動くのを見た時
      長くポジションを保有しすぎている時
      エントリーチャンスがなかなか来ない時
      利確する時
      損切する時
      etc…

    感情に巻き込まれないためには、常に、客観視している第2の自分を作り上げることです。

    その為には、トレード日記を付けることをお勧めします!

    トレード日記をつけているかどうかで、トレードで成功できるか否かが決まると言っても過言ではありません。

    有効なトレード日記の作り方は、以下の記事をご参照ください。
    「トレード日記」をつけると、負けが減って利益が増える!