現役税理士トレーダーつよ氏による、ファンダメンタルズ解説 第3弾。
FXトレードはテクニカル分析をメインに勉強してゆくものですが、基本的な経済の仕組みを頭に入れておくことで、今ここで取引している為替レートの意味が明確になります。
日本銀行の役割 withコロナ目次
20年以上続いたデフレを脱却させたテクニック
平成元年のバブル崩壊から、20年以上続いたデフレ経済。
この冗長なデフレを脱却するには、もはや、実体経済でインフレにもっていくのは不可能であるのに、一応の脱却を見せている。なぜか?
私は、「デフレを脱却するには、マーケットでインフレを起こして、それを実体経済に波及させるしか方法はない」と言ってきました。
マーケットとは、株式市場と不動産市場です。
要するに、株と不動産を資産インフレにする。
そうすればかなりの確率で、実体経済にはインフレの圧力がかかります。
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株式
企業は、自社株を含め様々な株式を保有しています。
その保有株式は決算で時価評価することになっているので、価格が上がると当然、利益が出ます。
会社の利益が上がれば、給料も上がります。
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不動産
不動産価格が上がると、それによって生産コストが上がります。
経費が増えれば、販売価格を上げざるを得なくなります。
そうなると、株や不動産で儲けたた人の金回りが良くなるので、お金を使う人が増えます。
長いこと塩漬けされていた株が含み益に転じたという人も多く、まあ、そんなこんなの効果があります。
ということで、現状のようなデフレではない状況が出来上がります。
日本の場合は、平成元年をピークに生産労働人口が減り続け、急速な勢いで少子高齢化、人口減が進んでいるので、昭和の時代のような、供給不足によるインフレが起きない状態でした。
そして、財務省のエリートは、生産労働人口の減少により、直接税(所得税、法人税還付金)の税収が落ちることを予測していたはずですから、平成元年から間接税(消費税)の導入を行います。
消費税は消費に税金をかける、
いわば、消費を罰するような税金です。
需要不足の中、こんな税金を導入すれば、需要が伸びるわけもありません。
この消費税が、デフレに拍車をかけました。
日本がデフレの間、大きくGDPを延ばした中国の闇
もうひとつ、日本がデフレの間、大きくGDPを伸ばした国があります。
ご存知、中華人民共和国です。
日本の企業は、バブル崩壊以降、格安コストで製造可能な中国にこぞって進出し、中国で物づくりを始めました。
ここで問題は、中国でいくら製造しても、日本のGDPは1円も上がらないということ。
中国人を雇用して、中国人に技術を教えれば、中国が発展し、中国のGDPが伸びるだけなのです。
そんなことを大企業が率先してやって、日本が良くなるわけありません。
そして中国は、日本だけではなく、世界中にデフレをまき散らし、ここ30年程、先進国のインフレ率を低いものにしています。
中国人は、兎に角、大量に物を作ります。
お陰で皆さん、服とか、いろんな物が安くなったでしょ?
中国が安く大量生産できる一番の理由は、ご存知のように、中国共産党に関わる一部の人間以外の人件費が、激烈に安いこと。
これは、大きな声で発言している人をあまり見かけたことはありませんが、中国には、人件費ゼロというものが存在します。
人件費ゼロというのは、ウイグル人を強制連行して、タダで働かせていることで成り立っています。
この、人件費ゼロのウイグル人を使っている企業は公表されています。
日立(経団連会長の会社)、ジャパンディスプレイ、三菱電機、ミツミ電機、任天堂、パナソニック、ソニー、TDK、東芝、シャープ、ユニクロ。
米国はナイキなど、多数の企業名が公表されていますので、調べてみてください。
強制連行、人件費ゼロとか、考えられないでしょ?!
こんなのが、お隣で急速に経済発展したんだから、日本が落ちていくのは当たり前。
でもそれは、日本の企業が尻尾振って中国行った結果だから、笑えない。
家電のサンヨーなんて、中国にお金持って、技術もって、ホイホイ行って、会社潰れましたから。
米国が執拗にウイグル人の人権を問題にしているのは、このような事情があるからです。
異次元の金融緩和 黒田バズーカー
そんな様々な要素で、日銀は初のETFとREITの購入を2010年10月28日に行いました。
ETF(イーティーエフ)=Exchange Traded Fund =上場投資信託
REIT(リート)=Real Estate Investment Trust=不動産投資信託
当時の日銀総裁、白川方明氏のもとで、ETF4500億円、REIT500億円の購入を決定。
その後、2013年4月に日銀の新総裁、黒田東彦氏が「異次元の金融緩和」と銘打って、ETF1兆円、REIT300億円の購入を決定。
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2013年4月、ETF1兆円、REIT300億円の購入
2014年10月、ETF3兆円、REIT900億円の購入
2016年7月、ETF6兆円、REIT900億円の購入
2020年3月、ETF12兆円、REIT1800億円の購入
(その他に国債、社債、CPの購入がありますが、割愛します)
このETFをよく見て下さい。
1兆円→3兆円→6兆円→12兆円
黒田総裁に代わってからのETF追加緩和は、ずっと倍々になっています。
それこそが、トレーダー界ではつとに有名な、黒田バズーカです。
そして皆さん、ご存じだったでしょうか?
日銀は、ジャスダックに上場しています。
JASDAQ(ジャスダック)=東京証券取引所が運営する中小型株を中心とした株式市場
我が国のお札を刷っている日本銀行は、株式上場企業なのです。
債務超過が続けば上場廃止です。
上場廃止を防ぐには、債務超過にならないようにしなければならず、その方法は2つしかありません。
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⓵税金で補填して増資する。
⓶株や国債が下がらないよう、お金を刷って買い増しする。
税金で補填して増資なんて出来るはずがないので、必然的に選択肢は1つになります。
日銀は必死にお金を刷って、株や国債の買い増しをやっています。
日銀はもはや、発行済み国債の50%を保有しています。
年金と株価の関係
対して欧米は、そこまで国債を買っていませんし、ましてやETFやREITのようなリスク資産は買っていません。
私が円高に懐疑的なのはこのためです。
円は以前のような安全通貨なのでしょうか?
円が安全通貨だったのは、大幅な貿易黒字が背景にあります。
この大幅な貿易黒字は、現在は失われています。
過去2年間は貿易赤字です。
上記のような日銀単独の理由で、株価や国債は下げるわけにはいけないのですが、もう一つ株価を上げないといけない重大な理由があります。
年金です。
GPIFの保有資産は130兆円ですが、支払わないといけない年金額は1400兆円です。
GPIF=Government Pension Investment Fund=年金積立金管理運用独立行政法人
そしてこのGPIFの資産運用のポートフォリオを、2014年10月、黒田バズーカ第2弾のときに、株と債券の運用割合を50%50%に変更しています。
おそらく、株で資産を10倍にするつもりです。
頑張れGPIF!(笑)
皆さん、これを見るとGPIFは狂ったように思われるでしょうが、やっと正常になったのです。
世界の年金の平均的な株式の運用比率は60%。
ちなみに世界第二位の年金運用のノルウェーの年金の株式の運用比率は70%。
世界第一位の年金は我らが日本のGPIFです。
戦後最大の実体経済悪化の今、株価だけが上がっているカラクリ
株式市場は通常、景気や企業業績と連動して上がったり、下がったりしますが、今は、戦後最大に実体経済が悪いと言われている中、株価だけが上がっています。
違和感ありますよね?
おそらく、実体経済がこれだけ悪化して、株価までもが下がり続けると、金融危機が発生します。
世界大恐慌になります!
そうなればアウトです。
第三次世界大戦が勃発し、多くの国家が潰れるかもしれません。
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1914年~1918年 第一次世界大戦
1918年~1920年 スペイン風邪のパンデミック発生
1929年 世界大恐慌
1939年~1945年 第二次世界大戦
第一次世界大戦中にスペイン風邪が流行し、その後の世界大恐慌に繋がり、その後、第二次世界大戦です。
世界の景気が悪化すると人々は争い出します。
米国は既に黒人が暴れていました。
みんなが安心して暮らせて、食べていけないと、争いが起きます。
世界恐慌を阻止するには、資産デフレだけは起こさせないという政策にたどり着いているはずです。
各国お金を刷り過ぎて、副作用でインフレになったとしても、大恐慌だけは避ける。
そして現在、新型コロナウィルスパンデミックに見舞われています!
私には、各国が連携して、共通の認識で株価を下げない対応をして、世界大恐慌を防いでいるように見えます。
金融緩和で金融市場と株式市場を支えて、実体経済が戻るのを待つ政策を打っていると見ています。(文責・つよ)